前回の大掛かりな定演と対照的な、学生指揮者のみによる定演となりました。音楽科の中嶋先生は常任指揮を降りられ、顧問として合唱団を見守ってくれることになりました。定演パンフレットの、「定期演奏会に寄せて」として書かれた先生のメッセージの一部を引用します。
***合唱運動も近頃は盛りを過ぎ、あまり活発というわけにはまいりませんが、それでも、”うた”、それ自身は不滅のものとして、広く社会に根をおろしています。(中略)ポリフォニーの時代、ハーモニーの時代が音楽史上認められるならば、今後はおそらくリズムの時代ということができましょう。Jazzのもつビートを無視しては、今後、音楽は存立することはできないでしょう。その意味で、今回のプロ・黒人霊歌は、合唱界の終わりか始まりかを占う試金石となりましょう。大いに期待して見守りたいと思います。***
教育者としての目で寄せられた、厳しい激励の言葉だと思います。現役当時は、軽く読み流す程度でしたが、現在、読み返してみると、合唱団に向けられた先生の思いが感じられます。

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第29回定期演奏会 1972年11月3日(金)PM6:30 県民会館大ホール
第1ステージ 黒人霊歌   指揮 工学部3年SKさん 伴奏 音楽科2年IMさん
       DEEP RIVER
      DON’T BE WEARY TRAVELER
            この2曲の編曲は R. Ven’e
       NOBODY KNOWS THE TROUBLE   
       WADE IN DE WATER
            この2曲の編曲は 石丸 寛
      SWING LOW, SWEET CHARIOT 
       BATTLE O’ JERICO
       GO DOWN, MOSES
            この3曲の編曲は R.Wagner
お馴染みの黒人霊歌ですが、6曲すべて同じ編曲者によるものではなく、3人の編曲者です。選曲した人のこだわりでしょうか。

第2ステージ 合唱小曲集  
 音楽科4年IMさんの指揮で女声合唱を2曲  工学部3年SKさんの指揮で男声合唱を3曲 工学部4年EYの指揮で混声合唱を4曲という、バラエティーに富んだステージを作っています。
    女声合唱 組曲「蛇の花嫁」      作詞:大手拓次 作曲:南 弘明
    男声合唱 組曲「柳河」より 柳河   作詞:北原白秋 作曲:多田武彦
          組曲「蛙の歌」より 小曲  作詞:草野心平 作曲:南 弘明
          ふるさと          作詞:室生犀星 作曲:磯部 俶
    混声合唱 もうっこ          津軽民謡    編作曲:大村 繁
         大島節           伊豆大島民謡  編曲:信時 潔
         通りゃんせ         日本わらべうた 編曲:小林秀雄
         七つの子          作詞:野口雨情 作曲:本居長世 編曲:伊藤辰雄
         からたちの花        作詞:北原白秋 作曲:山田耕筰 編曲:増田順平
         この道           作詞:北原白秋 作曲:山田耕筰 編曲:増田順平

第3ステージ 混声合唱のための組曲「蔵王」  作詞:尾崎磋瑛子 作曲:佐藤 真
    指揮は、教育学部2年ASさん Pf伴奏は、工学部1年OKさん。 これも、例年の定演になく、若くなりました。

この年の5月2日、3日の二日間、佐々木基之先生に甲府まで来ていただき、「合唱講習会」を開きました。合唱団メンバー全員が、ここで初めて「分離唱」を経験します。短い時間でしたが、基本的な分離唱から始まり、楽譜なしで耳から聴きながら讃美歌「主よこころみ」「ガリラヤのうみべ」を歌い、これまでになく澄んだハーモニーを予感させる練習を体験しました。限られた時間でしたが、佐々木先生からは、ハーモニーだけでなく音楽の大切なところ、言葉を大切に、日本語らしく歌うことなど実践しながら、わかりやすいご指導をいただきました。この講習会の録音を聴きかえしてみると、先生の指導を受ける前の演奏が実に間延びのした味気ないものだということがわかり、赤面の至りです。

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