先日の投稿で、小学館発行「サライ」11月号でピアニスト館野泉さんの記事に感銘を受けたことを書かせてもらいました。実は、その号でもう一人の偉大な日本人が紹介されています。名前は日本史で聞いたことがありますが、その人物の何たるかについてはまったくといって良いほど知らずにいたのですが、「サライ」の記事で興味を惹かれ、「高橋是清自伝」(上下巻)を取り寄せ読み始めたところです。

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高橋是清は、嘉永7年(1854)幕府お抱えの絵師の子として江戸に生まれ、生後すぐに仙台藩の足軽の家に養子に出されましたが、中々利発な子供で周囲から可愛がられたようです。5歳の頃、転んだところを疾走してきた馬に踏まれるけれど、無傷で済んだというハプニングも経験し、周りからも「運のいい子だ」と誉めそやされ、是清自身もいつしか深くそう思うようになったそうです。様々な苦難、窮地に陥っても「自分にはいつか良い運が巡ってくる」と楽観し、腐らず前向きに取り組みました。彼の著書『随想録』には
《栄枯盛衰は、人生の常である。順境は、いつまでも続くものではなく、逆境も、心の持ちよう一つで、これを転じて順境たらしめることもできる》と書き残しています。

高橋是清は、英語も、少年の頃から横浜へ行き「洋学修業」を積むほか、アメリカへ渡り現地で修業を重ねています。経済も実地で学びとり、実際的な問題解決に図抜けた能力を発揮しています。日露戦争時に不足する戦費調達のため米欧に乗り込んで外債募集を成功させています。

「自伝」を読み始めると、明治・大正から昭和初期に生きた人物ですが、難しい言葉は使わず平易な言葉で(編著者上塚司氏の尽力によるところもあるのでしょうけれど)当時の出来事が、目の前で繰り広げられているようにリアルに語られていて、実に痛快な読み物になっていることに驚かされます。

こうした偉大な人物が、二・二六事件で青年将校達の暴挙に命を奪われたという事実は大変残念におもいます

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