2027年、品川-名古屋間の開業を目指す、リニア中央新幹線の建設で最大の難関とされる「南アルプストンネル」の山梨工区に於いて12月18日工事が本格的に始まりましたね。鉄道を通す山岳トンネルとしては世界有数の延長25kmとのことで、その内、山梨工区7.7kmの工事において早川非常口付近で安全祈願式がとり行われたようです。山岳トンネルは地質調査を何度繰り返しても「掘ってみないと何が出るかわからない」(JR東海)らしく、予想できない難工事が懸念されている代物のようです。

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建設費や人件費が上昇する中で工事に踏み切った理由として、JR東海は長期の経営安定に欠かせないと判断したそうです。また、老朽化が進んだ東海道新幹線を、南海トラフ大地震のような災害時に補完する重要な意味もあるそうです。
10年間の工期で、南アルプスを貫通するという大事業で、経済性は勿論、危機管理上も大きな課題になるだけではなく、自然環境への影響、南アルプスの複数の河川で流量や、希少な高山植物に与える影響なども無視するわけにはいかない問題だと思います。
こうなると、単に一企業で取り組むだけでなく、国家として取り組むべき大事業なのではないかと思います。

「山岳トンネル」といえば思い出すのが、ヨーロッパのスイス・イタリア間を結ぶシンプロントンネルです。このトンネルが開通してから何と100年以上経っているのですね。1898年に着工し、1906年単線開通しています。およそ20年経ってから第2トンネルが開通していますが、こちらは延長19km余り。ヨーロッパアルプスと、日本の南アルプスの工事の難易度の違いは判りませんが、単純に比較すると、ヨーロッパでは1世紀も昔に20km近い山岳トンネルを掘っていたという事実に一寸驚きを覚えました。

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両者の断面図を比較して、気が付いたのですが、ヨーロッパのは全長を通して最大の標高差がわずか72mなのに対して、南アルプストンネルでは1000mを超えています。この差が工事の難易度にどう影響するのかよくわかりませんが、何か深い理由が有りそうです。

南アルプストンネルが延長25kmというだけでもかなり長いトンネルですが、品川名古屋間286kmの新幹線の内やく88%がトンネルとなるリニア中央新幹線には、もっと長いトンネルがあるのですね。最も長いのが、山岳トンネルではありませんが、起点となる地下の品川駅から神奈川県相模原に置かれる神奈川県駅までの「第一首都圏隧道」がほぼ37km、地下駅でそのまま「第二首都圏隧道」(約4km)につながり、私の家から2kmほど離れた地点で相模川橋梁で地上に顔を出すまで約42km地下に潜っていることになります。車窓風景を楽しめるなんてものではありませんね。

梨大合唱団で一緒に歌った土木工学科でトンネル工学を専攻していたO君ならば、もっと専門的な関心がいろいろあるに違いありませんが、専門分野が違うとはいうものの、科学技術の観点で、自然界の有様に手を加えて人間社会に有用なものをもたらそうとする営みに於いては、私も興味を待たずにいられません。

リニア新幹線の開業をこの目で見届けることが出来るかどうかわかりませんが、この大事業の行く末を見守りたいものです。できることなら、新幹線に乗車して南アルプストンネルを突き抜け、名古屋まで行ってみたい。

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