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2016年2月14日の放送は、盲目の天才ピアニスト、辻伸之さんをゲストに迎えてのベートーヴェン音楽会でした。タイトルを見た時に、「ものすごいテーマだな」と、驚きもする一方、「いったいどんな進め方をするのだろう」と、期待も膨らみました。30分の番組で巨匠の音楽を取り上げるのは至難の業ですよね。番組の冒頭で紹介されたプログラムで、ピアノ協奏曲「皇帝」に絞って、ベートーヴェンの音楽を紹介する30分だと知って「なるほど」と納得しました。

第五シンフォニーの冒頭でよく知られるように、奇抜な構成で聴衆を驚かせる音楽を多く残したベートーヴェンらしく、「皇帝」でも、曲の冒頭からいきなりカデンツァが始まります。一般的な楽式では曲の終結部直前に置かれて、ソリストが技巧を発揮できるように組まれるカデンツァですが、それを曲の冒頭に置いて聴衆をアッと驚かせるという、いかにもベートーヴェンらしい音楽だと思います。

辻井伸行さんが鍵盤に向かって、あごを少し前に出して頭を振りながら演奏する独特のスタイルが印象的ですが、ピアノから返ってくる音楽に全神経を集中させているためでしょうか、作曲者がその曲に込めた感動が、彼なりの解釈で混じりけなく聴いている人に伝わってくるところが素晴らしいと思います。

以前、何の放送だったか忘れましたが、辻井伸行さん自身の作曲した曲を、東日本大震災の被災者を励ますコンサートで演奏していた、優しい心が感じられたのを覚えています。きっとご両親をはじめ、愛情豊かな環境のもとに、目が見えないという大きなハンディキャップを背負いながらも立派に成長してこられたのだと思います。

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