山田和樹指揮者12016年2月21日の放送は指揮者山田和樹さんをゲストに迎えて「指揮者のわがまま音楽会」です。どんなわがままが飛び出してくるのか興味深く見せてもらいました。4つの「わがまま」が披露されました。

一つ目が「ノンリハーサル」。そのねらいは、演奏会その場の感興を尊重するところにあるそうです。演奏を揃えるために、普通はリハーサルを何度か行うのですが、演奏者が固定観念に囚われてしまうことが多く、新鮮さが損なわれるのだそうです。往年の名指揮者と伝えられるクナッパーツブッシュなど、ノンリハーサル主義の指揮者の名を挙げていました。

考えてみると、これはプロの音楽集団であるオーケストラだから通用することで、我々アマチュアの音楽愛好者にはまるで縁がない世界のように感じます。プロの音楽家は、より感動的な音楽の提供に努め、聴衆がそれを受け取るというパターンの中で成り立つことではないかと思います。

二つ目が「暗譜」。これには全く異論がなく、プロもアマチュアも同様に、良い演奏を創り上げるために必要なことだと思います。楽器でも、歌でも演奏するときに楽譜から目が離せないと指揮者の細かい指示をくみ取ることができません。指揮をする立場に立っても、メンバーが楽譜に嚙り付いていて、メンバーの顔が見えないのは困りものです。プロの場合はスケジュールが立て込んでいるために覚えきれないという職業上の厳しさがあると思いますが、アマチュアの場合には比較的時間が取れますので、暗譜するのは本人の努力によるところが大きいと思います。そういう私も偉そうな口はきけませんが、暗譜して、指揮者の示す一挙手一等足から、細かい顔の表情まで読み取れるようにしなければいけないと常に自戒しています。今回の放送では、モーツァルトの「フィガロの結婚」を、指揮者は勿論のこと、オーケストラ全員の譜面台を外して演奏してくれました。もともとこの曲は軽快な動きの速い曲ですが、全員暗譜で演奏した効果なのか、とても活き活きとした演奏に聴こえました。

さて三つ目の「わがまま」は、意外なことにオーケストラの配置をバラバラにすることでした。通常は、第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、金管、木管、打楽器とグループとなって配置を決めるのですが、今回はこれをバラバラにして、同じ楽器が隣に来ないように並ぶのです。このねらいは、一人ひとりの自主性を高めることだそうです。グループにまとまっていると、どうしても隣に頼ってしまう処があるそうです。アマチュアの合唱では良く経験することなのですが、プロの演奏家の世界でも同じようなことがあると聞いてちょっと安心しました。でも、どうなんでしょうねえ。指揮者にしても、それぞれの楽器に指示をするのが容易ではないでしょう。聴く立場にしても、各楽器群の音がまとまって聞えた方が良いような気もするし、もしかすると各楽器群の音がまとまらずに、溶け合って聞こえた方が良いのか、どちらが良いのかわかりません。茶の間のテレビのスピーカーから聞こえる音では、その微妙な音の違は聴き取れませんでした。

最後の「わがまま」は、なんとオーケストラのメンバーにそれぞれの楽器の音を唄ってもらうことでした。聴きなれていない曲だったので、頭の中で通常の楽器演奏の場合と比較することができなかったのですが、どんな響きが聴けるのだろうという期待が大きかったせいかどうかわかりませんが新鮮味を感じることは出来ませんでした。演奏者には悪いけれども、何だか取ってつけたようなイメージが拭いきれませんでした。個別の練習のときに、楽器を鳴らす代わりに唄って見るということをやりますが、指揮者の合図で、フルオーケストラで唄うというのは私ははじめて聴きました。

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指揮者の4つのわがままを叶えた音楽会でしたが、これまでの放送で「感心」したような場面が今回はなく、言葉は悪いのですが「お遊び」に終始したような後味でした。また、今回一寸残念だったのは、時間の制約上もあったのでしょうけれど、司会者五嶋龍さんの影が薄く、すべてゲストにおまかせのような印象でした。もう少し、彼の言葉が聴きたかった。

 

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