2016年3月13日放送のタイトルは「アメリカン・クラシックの音楽会」。指揮者井上道義氏をゲストに迎えて、平成28年度からの大規模改修工事を目前に控えた、日比谷公会堂を会場に、「アメリカン・クラシック」と言われる代表的な音楽が紹介されました。20160313Aクラシック音楽と言っているのは、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、・・・が知られるように、もともとはヨーロッパで誕生した音楽を指しているのですが、アメリカが発祥地となるジャズやブロードウェイ・ミュージカルなどのポピュラー音楽、カントリーミュージックなどと、ヨーロッパで生まれたクラシック音楽と融合して発展してきたものを、アメリカンクラシックというのだそうです。

アメリカン・クラシックに詳しい今回のゲスト指揮者井上道義氏の説明で、代表とされる『3人の作曲家』と紹介して、それぞれの作品の抜粋を聴かせてくれました。3人と言えば、私などがすぐ頭に浮かべるのが、「交響曲新世界より」:A.ドボルザーク、「ラプソディー・イン・ブルー」:G.ガーシュイン、そして「ウエスト・サイド・ストーリー」を書いたL.バーンスタインです。「新世界」が示す国がアメリカということですぐに頭に浮かびます。よくわからないのですが、番組では、4人目の作曲家、A.コープランドのバレエ音楽「ビリー・ザ・キッド」を取り上げています。『4人』としないで『3人』としたのは、A.ドボルザークはチェコの人なのでドボルザークを外したからなのか、それとも企画段階では『3人』のつもりだったのが時間が余って『4人』にしたのか、つまらないことですが、ちょっと気になる一言でした。

「新世界」の演奏を聴いてとても印象的だったのは、女性オーボエ奏者が奏でる「家路」でよく知られた、牧歌的な旋律の節回しが非常に独特な味わいを持ったものだったことです。「アメリカン・クラシック」に詳しい井上道義氏の解釈なのかなという気がしました。
「ラプソディ・イン・ブルー」の演奏でも、女性クラリネット奏者が奏でる旋律が、私がこれまで持っていたイメージを覆すような独特な節回しで、実に新鮮でした。演奏後の解説で、井上氏は「(ジャズの雰囲気で、)敢えてスィングさせました」と言っていました。20160313B指揮者の井上道義氏の名前は良く聞きますが、彼の癖なのか、これまでの生活環境から生まれたものなのか、話をするときの、ちょっと「上から目線」のような表情が気になりました。ですが、番組では「剽軽」な「お茶目」なところを数々見せてくれ、馴染みが出来ました。「ウエスト・サイド・ストーリー」の中の「マンボ」演奏途中で、突然客席の方に向き直り、スーツの前をパッと開いて見せたり、動きの激しい「ウエスト・サイド・ストーリー」の演奏が終わったときに、「こういう曲はジジイには向いてないね。筋肉が痛くなる」というようなことを言って笑わせてくれました。

最後の曲は、おとなしい演奏スタイルにでもなるなかなと思いきや、ステージに現れた井上氏は、颯爽としたカウボーイスタイルなのにびっくりしました。「ビリー・ザ・キッド」は西部の無法者だからこのスタイルなのだよと言っていました。

カウボーイハットは、30年近く前になりますが私が海外出張でテキサスに行ったとき、面白半分にカウボーイハットの専門店に入りました。ずらりと並んだハットはみな大きくて重いものでした。折角ですので、比較的軽くて被りやすいものを選んでお土産に買って帰りましたが、日本に戻るとなかなか気軽に被って外に出られません。でも庇が大きくて、強い日光を遮るのにはすごく効果的でした。
20160313Cそのカウボーイハットを召して指揮を始めたのですが、ハットが重いこともあるのか、滑りやすくなっている頭のせいなのか、後頭部にぶら下がってしまいました。頭の上に載っていても、後ろに下がっても指揮をするには邪魔なのでしょう。途中で、ハットを外して下に置いて、演奏を続けました。

A.コープランドの名前は知っていますが、彼の音楽については良く知らなかったので、調べてみると20世紀のアメリカを代表する作曲家の一人なんですね。パリに留学して音楽を学ぶのですが、学んだ西洋音楽にジャズの要素を取り入れ、24歳で帰国後アメリカ的音楽を創ろうと模索しました。アメリカ民謡を取り入れたりして、今回紹介された「ビリー・ザ・キッド」をはじめとして「ロデオ」「アパラチアの春」といったバレエ音楽を作曲したり、晩年には純音楽的作品に戻り、十二音技法を取り入れた音楽に挑戦したりと活躍したそうです。こういうことを知ってみると「アメリカン・クラシック」で取り上げる「3人の作曲家」とは、「G.ガーシュイン」「L.バーンスタイン」「A.コープランド」を指していたのかも知れないなと思いました。
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客席で井上道義氏が指揮する新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏を、嬉々とした表情で聴き入る五嶋龍さんの様子が画面に何度か映し出されましたが、これも印象的でした。

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