NHKテレビテキスト「100分de名著」は、わたしのお気に入りの一つです。19世紀後半のオーストリア・ウィーンの心理学者アルフレッド・アドラーの著書「嫌われる勇気」が90万部を超える大ヒットとなり、空前のアドラーブームを引き起こしたことをご存知の方は多いと思います。アドラーの名を私はこれまで知らなかったのですが、たまたま書店で見かけたこのテキストにより、アドラーの考え方を知り強い共感を覚え、現代の社会においてアドラーブームが起こったことに思わず納得させられてしまいました。いつもは、このくらいのボリュームのテキストを読むのに数日かかるのですが、週末ということもありましたが、興味深い内容に魅かれ、買って帰ったその晩に一気に読み切ってしまいました。2016年2月の放送で、4回にわたって哲学者であり日本アドラー心理学会認定カウンセラーであられる岸見一郎さんが講師を勤められました。

第1回 人生を変える「逆転の発想」

第2回 自分を苦しめているものの正体

第3回 対人関係を転換する

第4回 「自分」と「他者」を勇気づける

このタイトルを見ただけでは、よく見かける標題だなと思うくらいで具体的な内容については何の情報も得られませんでしたが、本文の節ごとに太字で書かれたサブタイトルが、内容を具体的に暗示していて関心を引きました。サブタイトルは

第1回 実践のための心理学               第2回 今より優れたいと思うのは、人間の普遍的な欲求である

身体的ハンディキャップの影響              見かけの因果律と人生の嘘に惑わされるな

フロイトとの出会いと確執                あなたが思っているほど、誰もあなたに期待していない

戦争の中での「共同体感覚」の発見            今の自分のあり方を意識化してみよう

意味づけを変えれば未来は変えられる           競争する相手は他者ではなく自分である

過去の経験は「決定因」ではない             みんながそれぞれ「一歩一歩前に進む」

大声を出すために怒る

選択のすべての責任は自分にある

今が変われば過去すらも変わりうる

変われない?変わりたくない?

何がライフスタイルを決めるのか

親の価値観の影響

対人関係に入っていく「勇気」を持つ

第3回 すべての悩みは対人関係の悩みである      第4回 共同体感覚とは何か

「自分が世界の中心にいる」という誤り         すべては自己受容から始まる

注目されたい子ども                  生きているだけで、あなたはだれかに貢献している

他者の承認は必要か                  無条件で誰かを信じること

三つの方法を意識する                 子どもを叱らない

「課題の分離」とは何か                対等な関係の上で貢献感を持つ援助

他者と協力しなければ超えられない課題もある      ライフスタイルはいつでも変えられる

アドラーと民主主義

 

どうです? これでも内容を詳しく掴むことはできませんが、著者が何を言おうとしているかをおぼろげながらも想像することができるのではないでしょうか?

私が特に強く惹かれたのは、第2回の講義の中で、アドラーは「自分を苦しめているものの正体」は「優越性の追求」と言っており、「すべての人々を動機づけ」ている源泉は「優越性の追求」だとしています。ここでいう「優越性」とは、他者との比較ではなく、自分自身が今よりも優れた存在になりたいと思って生きることを指しています。アドラーはこうも言っています。

「真に人生の課題に直面し、それを克服できる唯一の人は、その(優越性の)追求において、他のすべての人を豊かにするという傾向を見せる人、他の人も利するような仕方で前進する人である。」

自分の人生の理想として、常に心に留めておきたい言葉ではありませんか。

第4回の講義で示された次の言葉にも、心を惹かれました。

「共同体感覚が欠如しているからこそ、人を蹴落としてでも出世したいと考えたり、自分をことさらに大きく見せようとしたり、あるいは他者を支配しようと考えてしまうのです。戦争をはじめとするこの世の争いごとすべてが、共同体感覚の欠如によって引き起こされているといっても過言ではありません。他者を仲間だと考える人は、そのような他者と競争せずに協力し、力を使って問題を安直に解決するのではなく、言葉を尽くして解決しようとするでしょう。」

このテキストを読んで私ははじめて知ったのですが、それまで知っていた心理学のユング、フロイトと並んで、19世紀後半、心理学の歴史を大きく変えることになった三大巨頭といわれるもう一人がアルフレッド・アドラーなのだそうです。

人生の意味の心理学/アドラー

人生の意味の心理学/アドラー

Follow me!