2016年7月24日の放送は、「富田勲の音楽会」です。1932年に生まれ、我が国の電子音楽会のパイオニアと呼ばれた作曲家富田勲が今年5月に84歳の生涯を閉じました。今回の放送は、彼の功績を特集した番組です。tomita03

彼の略歴を紹介すると、慶応義塾大学文学部で美学美術史を専攻する傍らで弘田龍太郎について音楽理論を学び、大学2年で全日本合唱連盟コンクール課題曲に応募し、1位となったことから、作曲家への道を決意したそうです。在学中からNHKの音楽番組の仕事をはじめ、作曲活動に入りました。

今回の演奏者は、藤岡幸夫さんの指揮で、東京シティフィルハーモニックオーケストラ。藤原道山さんの尺八の他、意表を突くバーチャルシンガー、初音 ミク。どんなステージになるのか興味津々で画面に集中しました。

音楽の世界のみならず、現代の科学技術の驚くべき進歩による変遷により、昭和の前半生まれの私などは嘗ては進歩人の意識が少しはあったものの、60歳代の半ばを過ぎるともう附いていくのが大変になりました。ところが、ほぼ一世代前の人間が、逸早く1969年の大阪万博のときにシンセサイザーによる音楽に出会い、これこそ求めているものだと直感し、日本で初めてシンセサイザーを個人輸入することになります。news_xlarge_tomitaisao_around1975

インターネットで「富田勲」を検索すると沢山のページにヒットします。私が比較的安全な情報源として重宝しているのが「Wikipedia」です。個人名で検索すると大体は5~6ページからせいぜい10数ページに収まる情報量なのですが、なんと「富田勲」の記事は35ページもあったのでびっくりしました。その大部分が、彼の遺した業績・功績を記したものなのにびっくりしました。主な作品として書かれている項目名だけを拾い上げても、

ラジオ番組 NHK大河ドラマ ドキュメンタリー テレビ時代劇 テレビドラマの音楽 人形劇・特撮(テレビ番組) 舞台劇、芝居、歌舞伎の音楽 アニメーション ニュースのテーマ音楽 その他の番組 映画音楽(劇場用・劇場用以外の主に短編映画等) 歌謡曲 童謡 童謡の編曲 コマーシャルソング・BGM 合唱曲 校歌、社歌 交響詩・交響組曲 ・・・・

『トミタサウンド』として、今や世界中に知られる、彼独自の手法によって積み重ねられた音源があるそうです。

私が、富田勲について持っていたイメージに抜けていたものがありました。それは、「初音ミク」と彼の創作活動との深いつながりです。今回の放送の中でも、「イーハトーヴ交響曲」の演奏では、ステージの中央で踊りながら歌う「初音ミク」の姿が紹介されたのですが、正直私は「えっ?!」という印象がありました。インターネットで富田勲について調べてみると、彼の音楽に対する考え方が、私の好む音楽とはだいぶその世界が違うことに起因しているのかなと思いました。20160724D

それはそれとして、好奇心に煽られて、今回放送された「初音ミク」の映像がどんなふうに作られたのか知りたくなりました。テレビの画面では、演奏が終わった「初音ミク」が指揮者と握手を交わしたり、指揮者が「初音ミク」の手にキスをする場面などが紹介されましたが、実際会場にいる人たちにはどんなふうに見えているのだろうか。「新映像合成技術”ARシステム”導入で特別放送」とありますが、ARシステムってどんなものだろうと実物を是非見てみたくなりました。

早速インターネットで「初音ミク」のライブショーを調べてみて驚きました。なんとチケット価格がSS席9000円、S席8000円、一番安いA席でも7000円もするのです。ボックス席も用意されていてこちらは21000円です。こんなに高いのでは好奇心を満足させるためだけに見に行くわけにはいきません。それもそうですが、この価格で興行が成り立つというのはまさに驚きとしか言いようがありません。

今回の番組の中で紹介された、富田勲の音楽は、

♪1:人気テレビテーマ曲メドレー;「リボンの騎士」「今日の料理テーマ」「勝海舟テーマ」「文五捕物絵図」「新日本紀行」

♪2:「イーハトーヴ交響曲」初音ミクメドレー;3.注文の多い料理店、5.銀河鉄道の夜、7.岩手山の大鷲

♪3:『ドクター・コッペリウス』よりフィナーレRising Planet 9

馴染みの少ない前衛的な音楽に度肝を抜かれることが多い中で、唯一ホッとしたのが、マリンバで軽快に奏でられる「NHK 今日の料理」のテーマ音楽でした。こういう感性も持っていられる作曲家だったんだと、あらためて富田勲の功績の偉大さに感心しました。もともとは音楽が付いていなかった番組に急きょ音楽を付けることになり、放送の1日前に作曲を依頼されたのだそうです。昭和32年、当時25歳の新進作曲家は、その場に居合わせた演奏家と協力して3~4時間で完成させたそうです。世界に傑出した演奏家安部圭子のマリンバで奏でられる軽やかに跳躍するメロディーは、料理を作ろうとしている主婦(夫?)と、音楽家との立場の違いこそあれ、「ああでもない、こうでもない、こうしたらよかろう」と試行錯誤しながら、最上のものを創りだそうとする富田勲の人間性を思わせます。ウッドブロックの音は、まな板をトン、トン、トン、トン、トンと叩く包丁をイメージしたそうです。バーグラフの左端にある▷をクリックして、懐かしいイメージのあるテーマ音楽を聴いてみませんか?

「今日の料理」テーマ音楽

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