2017年1月8日、本年最初の放送は、「テーマ曲の秘密を知る音楽会」というテーマです。

取り上げられたテーマ曲は、最近話題をにぎわしているらしいテレビドラマ「ドクターX」、映画「君の名は」の2つと、一括りにするのはどうなのだろうかと思われる50年ほど前に世界の話題をさらった、巨匠黒澤明監督による映画「七人の侍」の中で使われた「侍のテーマ」、そしてこの映画に触発されてアメリカで、西部開拓時代を舞台にしてリメイクされたジョン・スタージェス監督の映画「荒野の7人」のメインタイトル、以上4つのドラマ・映画のものでした。

テーマ曲には、どんな思いや狙いが込められているのかを探ってみようというこころみでした。ゲストに、「ドクターX」テーマ曲の作曲家、沢田完氏。映画「君の名は」の監督新海誠氏。それぞれに、テーマ曲の作曲に関する思いや、狙いを語ってもらいました。番組の中でカメラが捉えた作曲家沢田完氏の真剣な眼差しに感動しました。実のところ私は、以上の作品の名前は知っていますが、作品を観るところまでいっていないので、「ふうん、そんなものか」くらいにしか印象には残らなかったのですが、50年以上も前に創られた「七人の侍」という作品の偉大さを知って驚いたものです。黒澤監督が、テーマ音楽にかける思いの深さにあらためて感心した次第です。作曲家早坂文雄氏の言葉が紹介されていましたが、監督に何度もテーマ曲を提案したが受け入れてもらえなかったそうです。どうせダメだろうと捨てた、ごみ箱から拾い上げた作品が、ようやく受け入れてもらえたというエピソードもあったそうです。黒澤監督の頭の中には、ドボルザークの「新世界交響曲」の音楽があったのだそうです。

映画「七人の侍」は、1954年に公開されていますから、私の記憶に残っているのはリバイバルでのヒット情報だと思います。何しろ、当時の通常の作品の7倍ほどに匹敵する製作費をかけて、何千人ものスタッフ・キャストを動員し、1年余りの撮影期間をかけて創った超力作なんですね。登場する野武士の髷や、服装をはじめ、綿密な時代考証に基づくリアリズムに徹した黒澤監督の映画作りにかけた情熱の深さに改めて敬服しました。日本の戦国時代を舞台とし、野武士の略奪により困窮した百姓に雇われる形で集まった七人の侍が、身分の違いによる軋轢を乗り越えて協力して野武士の一団と戦うテーマは、時代を超えて人々の共感をゆるぎないものにする大きな力があるのでしょう。

黒澤監督は、尊敬するアメリカのジョン・フォード監督の西部劇映画の少なからぬ影響を受けているそうですが、この「七人の侍」も、世界の映画人・映画作品に影響を与えているそうです。1960年にアメリカで作られた「荒野の七人」は、映画の主題を同じくして、舞台がアメリカ西部開拓時代となるリメイク作品だそうです。世界的に有名な作品が日本で焼き直しとなって出回る話は良く聴きますが、日本の作品がアメリカでリメイクされたなんて聞くと、すごいんだなあと思いますね。

今回の放送のテーマである、テーマ曲のほうはそっちのけになってしまい、黒澤監督の作品の方にすっかり関心を奪われてしまいました。

演奏でとても印象に残ったのは、「君の名は」テーマ曲演奏の中で、三人のソリスト、ピアノ、チェロ、サクソフォーンの内、水野由紀さんが演奏するチェロの響きがとても味わいの深いものだったことです。楽器そのものが持つ音色も大きく支配しているのかもしれませんが、水野さんの身長がいくつかは知りませんが、楽器がよく見るものより大きく見え、低音部の迫力といい、豊かな、深みのある響きが良く聴くチェロの響きとは一線を画しているように思いました。

 

 

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