忘れることのできない6年前の東日本大震災の直後、相次ぐ海外一流演奏家の日本公演キャンセルの中で、約束通りに震災の傷跡がまだ生々しい4月初旬に来日し、多くの日本人の心にともしびをかざしてくれたドミンゴの温かい心に感激しました。あれから6年が経ち、あの教訓を風化させることがないようにと3月11日を一つの節目として様々な活動が展開されているようですが、あのドミンゴが、音楽のちからで人々に何かしてあげられることはないだろうかと再び日本にやってきました。

NHKのニュースで紹介されて知ったことなのですが、かつてのメキシコ大地震で多くの親しい人を失った深い悲しみが彼の心に強く残っているらしく、それが彼の行動の原点になっているように思います。メキシコ大地震の際に、ドミンゴ自身が作業服姿で救助活動に精を出している映像も紹介されました。

被災者ばかりでなく、多くの日本人を勇気づけようと開かれた6年前のコンサートでアンコールに歌われた曲が、日本人誰もが心を揺さぶられた「HURUSATOふるさと」そこらの日本人よりも美しく、抑揚のある日本語で心が込められた「うさぎ追いしかのやま」だった。会場の多くの人々が涙をぬぐう姿が印象的でもあったが、ドミンゴとステージで一緒に歌ったソプラノ歌手も涙腺が緩み、涙をぬぐうしぐさを見て、音楽の力がこうも人々の心をつなぐものなのだという想いを一層強く感じました。今回の来日コンサートでも再びアンコールに会場の皆さんにも呼びかけながらうたった「ふるさと」 英訳された歌詞が画面に流れていましたが、山紫水明の尊さを知り、生きとし生けるものがお互いに尊重しあえる世界、決して私利私欲に走らないことを教えてくれる世界中の人々が愛すべき歌ではないかと思います。

命ある所に、希望はある ドミンゴ

震災という大自然の脅威により、図らずも命を落とされた多くの人々を取り戻すことはできませんが、生きながらえた私たちは、その尊い犠牲を教訓として、礎としてさらに前進する勇気と希望を捨ててはならないものだと思います。

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