炎天下に駐車しておいた自動車の中の暑さに辟易している人は、私のみならず沢山おられるでしょう。

時間に余裕がある場合は、乗り込む前にエンジンを指導してエアコンで車内温度を下げてから運転スタートという方法を取っていられる方もいると思います。車の外から無線でエンジンをかけることができ、温度が下がった車に乗り込む機能付きの車も売り出されています。

今回、目に留まったのが、自動車用ソーラーファンを従来より大幅に安くして売り出している広告です。これなら、車内を熱くしている元凶の太陽エネルギーを使って、車内温度を下げるという省エネ商品であり、3980円という価格もまあ妥当と思えたので購入してみました。3980円は、私にとっては決して、はした金ではありません。購入を決めた頭の中には、これが十中八九、満足する性能である可能性は限りなく低いだろうけれど、これまで蓄えてきた経験と知識、および試行錯誤を繰り返してきた結果、手元に残っている部品やら何やらを駆使して、改良していけるという目論見があったからなのです。手作りでかなわないのが自動車の窓にスマートに取り付けられる換気ファンを作ること。極端な話が、換気ファンを入手するために3980円を出す決心をしたと言ってもいいでしょう。そう考えると、一寸高い買い物かも知れませんね。

届いた商品のパッケージを開けてみると、案の定、ソーラーパネルは、受光部面積57x106mmと小さなもの。換気ファン部の開口は直径65㎜。この商品は、発売当初は換気ファン部の背中にソーラーパネルが取り付けられていたのですが、これだとパネルが太陽光を受けるのに制約が多すぎるということで、パネルを分離して、太陽光を受けやすい位置に置くように改良したものです。パネルとファンを分離したのですから、当然、両者をつなぐ配線が必要ですが、使われている配線はビニール被覆外形1.6㎜の平行線で長さ2.5m。

物は試しと、先ずはそのままの形で車に取り付けてみました。パネルに太陽光が当たると、確かにファンは廻りだしましたが、音もせず静かにクルクルと廻っています。車内の熱気を外に出すためのファンなのですが、吹き出し口に手を当ててみても、空気の流れは殆ど感じられません。やはり、これでは気休め程度でしかないなという予想は当たっていました。

改良が必要だと考えたのが、次の4点。

1.ソーラーパネル  前記した小さなパネルの発電能力について、電圧・電流・容量などの仕様は一切書いてありません。これまでの経験から察すると、容量はせいぜい1W程度で、電圧も5Vあれば御の字だろうと読みました。(ネットで検索したところ、誰かの投稿に、「1.5Vのパネル」という文言を見つけました。このパワーでは換気する力も推して知るべし。

以前、実験に使用した75x100mmのパネル(秋葉原の部品屋で手に入れたもの)で、1枚当たりの容量が1wで、電圧5.5V、これを四つ切写真用の木製パネルをベースにして、6枚並べた(並列接続)ものがあります。これなら、ダッシュボード上にも載せられそうだし、パワー的にも妥当なところかなと、直列接続だったものを並列接続に直して使うことにしました。

2.配線 駐車中に太陽光を受けやすいダッシュボード上に置いた発電パネルから、後部ウィンドウに取り付けたファンまで配線を転がしてみると、付属の2.5mでは足りません。少なくとも3mは必要なのですが、付属の細いケーブルでは、抵抗が大きく電圧降下も馬鹿にならないと考えられます。「1.5Vのパネル」というのは、2.5m配線の先端で測ったのかもしれません。写真に示すような太いキャプタイヤケーブルに換えました。

3.換気ファン ここまでは付属の発電パネルで回しただけなので、ファンそのものの換気風量がどれだけあるのか想像がつきません。ついているモーターの定格もさっぱりわかりません。これも「えいや」の判断ですが、5V程度の電圧でも耐えられるのではないかと踏みました。上記の、6枚組のパネルを使ってみると、「ブーン」と軽い音がして、勢いよく廻りました。引き出し口からは、そう強くはないものの、風の流れが感じられます。

4.換気ファン取り付け  換気ファンは、自動車の後部ウィンドウにガラスと窓枠の間に挟んで取り付けます。最近の車は、窓を閉めるときの挟まれ事故防止のため、窓ガラスと窓枠との間に、体の一部や物が挟まれた状態をセンサが検知して窓が閉まらない機構が付けられているものが増えてきました。私の車も例に漏れず、換気ファンを挟んで窓を閉めようとレバーを引くと換気ファンを検知して窓が開いてしまいます。商品の広告にも「機構付きの車には取り付けられません」と、チャンと明記してあり、騙された訳ではありません。チョットしたテクニックで対策を取ります。窓を閉めるレバーを引き切らず、微妙に操作して、センサが検知する前にレバーから手を放します。手を離すのが早すぎると、換気ファンがしっかり固定されず、走行中の車の振動でガタガタしてしまいます。こうした微妙な操作が必要なので、頻繁に取り付け取り外しをするわけにはいかず、兎に角シーズン中は、雨が降ろうが風が吹こうが、取り付けたままにするしかありません。

換気ファンを挟んだ両側の窓は2cmほどの隙間ができるのですが、そこはきちんと、シール用のゴムパッキンが付属しています。このゴムをご自分の車の窓サイズに合わせて切ってお使いください、ということです。ただ、問題は換気ファンの頭部稜線にはR5~10くらいの丸みがついているため、パッキンを直線状に切ったのではすき間ができてしまいます。すき間ができないようにと、ゴムに逆Rを付けて切るのは容易ではありません。機械設計の経験があるものだから、余計に、こういった配慮がなされていない製品をみると、設計指導に行きたくなる衝動にかられます。勿論、理想を追求したらコストが跳ね上がってしまうことも理解できますが、妥協するポイントがあまりにも低いところにあるような気がしてなりません。R5の隙間だけではなく、横幅15cmの換気ファンの肩に当たった雨滴は、このR5の隙間から車内に流れて入りますので、軽視はできません。対策として、見栄えはよくないのですがR部に小さい板を当てて、本体とのすき間をパテ状の物で埋めました。

ここまで改良を済ませ、この記事を書いているのですが、あいにくの雨模様のため、換気能力を試すまで天候の回復を待たなければなりません。天候の回復を待って、実地テストを行い、その結果をまた報告したいと思います。

この作業をしながら、換気ファン1台の能力にも若干疑問が生じたものですから、換気ファンを複数台に増設することも検討しました。ネットで検索して驚きました。3980円で購入したところとは別の販売ルートだということもありますが、同じ製造元の販売当初の発電パネルと換気ファン一体型のものが、なんと700円台で売っているではありませんか。パネルと別置きタイプを開発して、一体型のメリットが薄くなってしまったため、在庫処分に走ったのではないかと想像します。一体型でも、自前の6Wパネルから供給してやれば、付属のパネルは使わずに済むのではないかなと考えています。

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