東京オペラシティ・タケミツメモリアル・コンサートホールの開館20周年記念イベント「音楽のたまて箱」に行ってきました。音楽の玉手箱1音楽の玉手箱2前半は、早稲田大学交響楽団(通称ワセオケ)による演奏。後半が、陸上自衛隊中央音楽隊による演奏です。ワセオケは、1978年の第5回国際青少年オーケストラ大会(通称カラヤンコンクール)で優勝以来カラヤンとの縁が出来、1979年には大隈講堂でカラヤンの指揮により演奏をしたという経験を持つ団体です。田中雅彦氏の指揮により

1.リスト 交響詩「レ・プレリュード」 2.スメタナ 交響詩「わが祖国」より「モルダウ」 3.レスピーギ 交響詩「ローマの噴水」 4.チャイコフスキー 幻想序曲「ロメオとジュリエット」を聴かせてもらいました。

豊かな響きを持った、素晴らしい演奏でした。

後半は、1部と2部に分かれ、1部は、1等陸尉守屋陽介の指揮により、

1.W.ウォルトン(F.エッカー編曲):戴冠式行進曲「宝玉と王の杖」 2.J.S.バッハ(A.リード編曲)目覚めよと呼ぶ声あり 3.ヘンデル(宍倉晃編曲)歌劇リナルドより「私を泣かせてください」ソプラノ独唱は陸士長松永美智子 4.バーバー(ベッケル編曲)祝典トッカータ

4曲目の祝典トッカータでは、ゲストのオルガン奏者石丸由佳さんが、当ホールの目玉でもあるパイプオルガンを鳴らしてくれました。オルガンのソロの部分で、両手で弾く鍵盤を使わずに、足のペダルだけで演奏する妙技を披露してくれました。客席からは、奏者の上半身しか見えないので残念でしたが両足だけで弾いているとは信じられない妙なる響きに驚かされました。

ワセオケのコントラバス5台か6台の重厚な低音の響きの後に聴くと、コンバス1台とチューバ2本で構成する低音は、始めちょっと物足りないように聞こえましたが、耳が慣れると、これはこれで低音は十分な響きだなと感じられました。4年ごとにそっくりメンバーが入れ替わる宿命を持つ学生オーケストラの完成度と比較してしまうと、陸自の吹奏楽の響きがメリハリが利いているように感じます。自衛隊の音楽隊について最近まで知らなかったのですが、職場の愛好家の集まりなんていうレベルではなく、メンバーすべてかどうか詳しいことは知りませんが、音楽大学などで専門教育を受けた人が、厳しいオーディションを受けて、ごく一部の志願者が晴れて入隊できるという狭き門なんだそうです。国賓、公賓を迎えた行事での演奏や、定期演奏会、ジャパン・バンド・クリニック、全国各地のコンサート、オフィス街でのコンサートなど息をつく暇もないコンサートスケジュールをこなし、そのための練習を考えると決して片手間でできる仕事ではなく、吹奏楽を専業としている団体のようです。

オーケストラの旋律楽器としての弦楽器が管楽器と入れ替わっているだけで、多彩な打楽器、低音のコンバス、ハープも含めておりオーケストラとあまり変わりがないようです。

近年は、自衛隊の歌姫と人気を博している、音大声楽専攻の声楽家も活躍の場を広げており、高いチケットを買って聴きに行く音楽に台頭する音楽の世界が出来つつあるように思います。大きく違うのが、プロの演奏家と違って、公務員の立場で音楽活動に従事しているわけですから、行動にも様々な制約が課せられているはずです。逆な見方をすれば、オーディションに通過できる実力を備え、パスすれば安定した仕事が続けられることにもなるのでしょうか。音大生の就職先として人気を集めているというようなことも聞きました。

年に一度、東京の武道館で開かれる「自衛隊音楽まつり」は、全国の自衛隊各部方面隊音楽隊をはじめ、在日米軍軍楽隊や海外の軍楽隊を招いて盛大なフェスティバルをしています。入場料は取りませんが、応募しても、なかなかチケットが手に入らないほど人気を博しているそうです。

陸自音楽隊の2部は、1等陸尉蓑毛勝熊の指揮により、

5.武満徹「デイ・シグナル」シグナルズ・フロム・ヘヴンⅠ 6・黛敏郎(K.フォイットコム編曲)映画「天地創造」よりテーマ 7.久石譲(森田一浩編曲)もののけ姫セレクション 8.J.バーンズ 秋の独り言(オーボエ:3等陸曹 大西さやか) 9.A.リード エル・カミーノ・レアル(ラテン・ファンタジー) 10.和泉宏隆(真島俊夫編曲)宝島  と、現代の音楽を新しい感覚で演奏してくれました。オーボエの音色がまた、実に甘酸っぱく、「独り言」をつぶやく旋律の流れも実に見事でした。

聴衆としてうれしかったのは、最後の曲で、聴衆の中から「一緒に演奏したい人」を募って、各自が用意した楽器をもってステージに所狭しと勢ぞろいして演奏する場面。客席にいる聴衆にも指揮者の上手なリードのもと、笑顔を作って両手を頭の上で叩き、ステージ上の演奏者と会場一体になって音楽を作るという楽しいひと時を過ごせたことです。

予定されたプログラムが終わったところで、蓑毛1等陸尉より、中央音楽隊が咋8月、1か月をかけイギリスへ渡り、世界各国の軍楽隊の祭典で演奏しグランプリをいただいたとの報告があり、その話に絡めて、アンコールに、行進曲「海を超える握手」が披露されました。この時も、1等陸尉の合図で客席の人々も一体となって手拍子を取り、耳から入るだけの音楽にはせずに、体の動きを伴って一緒に音楽を楽しむという、充実したひと時を過ごすことができました。ありがとうございました。

歌姫松永美智子陸士長をロビーで見かけることができたので、一言賛辞をかけた所「まだまだ未熟ですので」と、謙遜の言葉が返ってきました。いままでyoutubeでしか観る(聴く)ことができなかった歌姫と直に言葉を交わせたというおまけ付きの充実したコンサートでした。もう少しゆっくり話ができればよかったと帰りの電車の中で悔いても後の祭り。松永さん、自衛隊という特殊な世界の中で音楽活動を続けていく途上には、辛いことも待ち受けているかも知れませんが、素敵な笑顔を絶やさず、頑張って続けて精進してください。陰ながら応援させてもらいますよ。(写真はネットで探したものです。演奏中の撮影は禁止されていますものね)

Follow me!