ずっと楽しみにしていた小山実稚恵さんのピアノリサイタルを、地元相模大野のグリーンホールで聴いてきました。

プログラムは、ブラームスから始まり、シューベルト、ベートーヴェン、ショパンとロマン派の大御所となる著名な作曲家の作品を並べた肩ひじ張らずに聴けるものでした。

プログラム最初のブラームスの曲は、正直なところ私はあまり親しみがなかったので、どんな音楽を聴かせてくれるのだろうかと好奇心が勝っていました。パンフレットの曲目解説によると、《3つの間奏曲》は、「悲しみの情と孤独の思いが交錯する暗い情調に覆われた曲」と書かれていましたので、開幕早々に、こういう曲をおくのかな?と私が勝手に描いていた小山さんのイメージとちょっと違うなあと思っていましたが、開演に先立つ場内アナウンスで「演奏者の希望により、演奏の順番を変更させてもらいます」と。

同じく曲目解説の言葉を借りると「ワルツ風の曲想による穏やかな抒情を湛えた」《6つの小品》より第2曲「間奏曲」で幕を開けました。今日のプログラムの印刷原稿に書き並べたものの、リサイタルの日程が近くなり、イメージがより一層固まってきた段階で、「やはり、この順番の方がいいわ」となったのでしょう。印刷したものは、訂正ができますが、聴衆が受けてしまった印象は容易には変えられませんからね。

2番目のシューベルト 即興曲作品90 D899は、よく親しんでいる曲なので、今日の演奏はどんな色彩の音楽が紡ぎだされるのかとワクワクして聴きました。

第1曲アレグロ・モルト・モデラート、ハ短調

第2曲アレグロ、変ホ長調 流れるような速い動きの主部と動きに満ちた中間部からなるこの曲を、小山さんはしっかりとした構成力で楽しませてくれました。このくらい速いパッセージは、ピアノを子供の頃から始め、相当練習を積み重ねないと演奏できるしろものではないと思います。小川のせせらぎを聴きながら、まぶしい陽の光に煌きつつ、風に吹かれてクルクル廻る風車に会話も一時途切れたような感覚を覚える間もなく、3拍子でありながら、行進曲の様な躍動感を感じさせる中間部が展開されます。見事な連結部を経て、再び主部につながり、この終わり方が圧巻で、終曲・フィナーレのような興奮を呼び起こして両手が鍵盤から離れたものですから、まだ2曲続くのですが、客席から拍手が起こり、私もつられて拍手をしてしまいました。普通は4曲演奏が終わってから拍手するのでしょうが、見事な演奏ぶりで、拍手が起こったのも自然の成り行きだったかもしれません。小山さんは、落ち着いた面持ちで拍手が収まるのを待ち、第3曲の演奏に入りました。

第3曲アンダンテ、変ト長調

第4曲アレグレット、変イ短調 この曲も、16分音符の分散和音からなる速いパッセージと、四分音符2小節の和音の動きとが組み合わさる中に、左手に力強い旋律が表れてくるといった、とても印象的な音楽です。小山さんは、これらのモチーフを巧みに組み合わせて、作曲者シューベルトがこの曲に込めた思いを自然に私たちの心に届けてくれる素晴らしい演奏家だなと思います。

3番目のベートーヴェン、4番目のショパンと続きましたが、シューベルトの演奏の余韻が強く残っていた為、折角の名演奏なのに素通りしてしまったような感じでした。

プログラムに載せられた演奏曲目が終了しても、鳴り止まない拍手に応えて、ショパンのマズルカ、ノクターン、幻想即興曲を演奏してくれました。アンコール曲の演奏を始める前に小山さんは、客席に上半身を傾けながら、優しい声で「ショパンのマズルカを」と語りかけてくれ、愛らしい一面を見せてくれました。

演奏終了後、ロビーでサインを頂き、握手までしていただきました。感激!(この日、私は演奏会終了後、すぐ別の会合に移る必要があり、アンコール曲の一部しか聞けませんでした。サインを頂いたのは家内です)

2月に、立川市と、瑞穂町と続けて行われる小山さんのコンサートを予約してあります。どちらもオーケストラとの共演で、ベートーヴェンのエグモント序曲、ピアノ協奏曲「皇帝」、そしてショパンのピアノ協奏曲第1番です。とても楽しみです。

 

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