「おもちゃ病院まちだ」に参加して早、2か月半が過ぎました。
1月27日が、今月二度目の定例開院日でした。

最初に見えた患者さんは、「おやすみホームシアター」と名付けられた、およそ15cm立方のサイコロ様の形をしたプロジェクター&ミュージックボックス。症状は「プロジェクターの光が出ない」 「どなたか、やってみませんか?」と事務長の声を聞き、僭越ながらも新米の私が「ハーイ!」と応じて取り組むことにしました。一見して、「これは複雑な電子回路が組み込まれているに違いない」ということは読み取れたので、私一人の力ではとても直しきれるものではないことは明らかでした。でも、ここ「おもちゃ病院まちだ」では、みんながそれぞれ持っている知識経験技量を出し合って、おたがいに相手を尊重しあいながら、気持ち良く患者の治療(おもちゃの修理)に取り組んでいき、完治(完成)した暁には皆で喜び合うという素晴らしいチームワークが根付いているということを、この2か月半の間に十分感じ取ることが出来ていたので、「甘え」があることも十分承知したうえで、憂慮することなしにチャレンジしたのです。

持ち込まれるおもちゃには、説明書が付いていることは殆どありません。持ち込まれた現物を見て、「○○が動かない」といった程度の情報しかないところから、私達の治療は始まります。ここに集まっているドクターは、程度の差こそあれ、経験を積んだ人たちですから、それぞれ違った経験を持っていた人たちの知恵を寄せ集めれば、大概のおもちゃの仕組みや、よくある故障のタイプなどわかります。直近の一年間の受付件数が、1000件を超えたのですが、なんとその98パーセントが直って、子供達に喜ばれているのです。残りの2パーセントはどういうものかというと、組み込まれたICの特殊なプログラムが解析できないといった、最新式のおもちゃがほとんどだそうです。

先ずは、「おやすみホームシアター」が、どんな状況なのかを自分の目で確認することから始まります。
正面の、白地の顔にオレンジ色で象られた目鼻口がスイッチになっていて、鼻を押すと電源のON/OFFができ、目と口は曲の選択や、ヴォリュームを変えたりするスイッチになっています。鼻を押してみたところ、電源ONとなり,スピーカからディズニーの楽しい曲がほんのわずかな時間流れたと思うと、すぐにOFFになってしまいます。

この症状からは、回路が正常に動作していないことが察せられます。まず疑うのは、電源です。電源は、単2乾電池4本です。乾電池を調べると、1.5V定格のものがわずか1Vしかありません。となると、1.5Vの電池を入れれば正しく動作する可能性も考えられました。残念ながら電池を入れ替えても、ライトは光りません。それでも、スピーカーから音楽は途切れずに鳴り続けることが確認できました。

こうなると、分解してみるしかありません。分解するにも、筐体を組み付けているビスは、深~い穴の奥にあり、標準的なドライバーでは届きません。ドクターのOさんから、細長いシャフトを持ったドライバを貸してもらい、分解することが出来ました。白い円筒状の底部に中央の丸穴、その両側に黄色と黒のリード線が出ているところに、スクリーンに映し出される画像ディスクを回転させるモータ。その隣の六角形、銀色のプレートが、スクリーンに投影するための光源となるLEDライト。分解中のため宙ぶらりんになっている緑色の板が回路基板。この上にIC,トランジスタ、抵抗、コンデンサ等が所狭しと配置されています。回路は、緑色の基板に細かく印刷されていて、肉眼で追いかけることは難しくルーペで覗かないと無理です。

ここから、奮闘が始まるワケですが、詳しい進捗状況は別稿に記すことにします。「ライトが光らない、モーターが回らない」症状に対しては、もう私の手におえるしろものではありません。その方面に詳しく、問題解決にも素晴らしいアイデアをたくさん持っておられるドクターが応援してくれた結果、奮闘5時間の末にようやく「ライトは光り、モーターも回る」ところまでこぎつけました。別稿に詳しく記す予定ですが、「モーター&ライト」を駆動する専用回路は回路基板の中央にモールドされていて、修復不可能です。したがって、「ライトを光らせ』「モーターを回す」ためにはどうすればよいのかを考え、それを実行して、お客様に喜んでもらうというのが「おもちゃ病院まちだ」の基本コンセプトの様です。
何が何でも、元通りにしなければいけない、といった考えにとらわれていたら、今回のような「ホームシアター」に限らず、ほとんどのおもちゃは「修理不可能です」といって、お客様に返すしかないでしょう。となれば、修理不可能のおもちゃは、ごみ箱行きとなり、新しく買いなおすしかなくなります。

地球上の限りある資源を有効に使い、無駄遣いをできるだけ減らして、将来の人々に禍根を残さないためのささやかな試みかもしれませんが、「おもちゃ病院まちだ」の活動は非常に意義深いものがあるのではないかと自負している今日この頃です。

もう少し詳しく進捗状況を覗いてみたいという方は、下のタイトルをクリックしてみてください。

おやすみホームシアター_「おもちゃ病院まちだ」の一コマ

 

 

 

 

 

 

 

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