昨年から毎月数回、山梨の甲府へ行くことになりました。用事を済ます前後に昼食をとることになるのですが、ほど近いところに美味しい「十割そば」を食べさせてくれるお店を見つけました。

所在地は、南アルプス市下今井46-2。「当店では自家製粉しており 国内産玄そばの皮を取り除き 丸抜きし 石臼挽きした 十割そばです。 そば本来の 甘さと香りを
余すところなく引き出しました」と店内に掲示してあります。「国内産そば」のウソ偽りのないところを示すように、店内の片隅に「茨城県産」と印刷されたそばの実の袋が積まれていました。
何よりもうれしいのは、歯ごたえがしっかりしてて、香りもよい美味しいそばが3玉まで同一料金で食べられるのです。ちなみに、「ざるそば」は650円。ひと玉だけ食べるとしても、決して高くはない値段ですが、同じ料金で3玉食べられるのです。もう、だいぶ前の話ですが、中央道長坂ICの近くで食べた美味しい十割そばは、ざるそば一枚800円でした。美味しくてついつい3枚食べてしまったのですが、2400円。ざるそば3枚でこの値段は、そうそう食べられませんよね。この店を知るまでは、美味しいそばは、このくらいの値段はしょうがないよね、と思っていたので、この店の値段が信じられないくらいです。

何度か足を運んでいるのですが、今日はじめて楽しいものを見ることが出来ました。店内に展示されている、そばを挽く石臼が実際にそばを挽いていたのです。いかにも重そうな石臼は昔ながらのものですが、ソバの実の供給から、挽かれて粉になったそば粉の収集まで全く自動化されています。自動機械を学び、関連する仕事を経験してきた一人として非常に興味をそそられたので、店の人に許可をもらい、写真を撮らせていただきました。上部のホッパーに入れられたソバの実は、黒い皮をむかれて小麦色に近いものでした。ここから、一定の速さで石臼の中に落ちて挽かれていきます。落ちる速さは、ホッパーの底部に設けられた装置で加減されるようになっています。

見学させてもらった時は一番少ない目盛りにセットされていました。石臼が1回転するごとに落ちるソバの実の量は、目見当ですがざっと大さじ一杯くらいでした。このくらいの量ですと上下の石臼の隙間から挽かれて出てくるそば粉の量は注意して見ないと分からないくらいにすくなく、わずかにパラパラとこぼれ落ちる程度です。
こぼれ落ちたそば粉は、石臼の周囲に設けられたリング状の受け皿で受け止められます。回転している石臼に取り付けられた箒がぐるっと回りながら落ちたそば粉を掃き集めて、リング状の一か所に開けられた穴から落ちていき、外から見ることはできませんがその下に置かれている容器に溜まっていくのでしょう。
こうして挽かれたそば粉がそばになって私たちのテーブルの前に出されてくるのですね。あるお店では、実際にそばを打っているところを見せてくれているところもあります。そばが作られている現場を見ながら食べるというのは、何よりもまず安心だということも言えますが、はるか昔から先人がいろいろ工夫して自然の産物に手を入れて美味しく食べやすく工夫してきた歴史を肌に感じることができ、大変うれしいものです。以前どこかで目にしたことがありますが、「おいしいそばのポイント」は、「3たて」といって、「挽きたて」「打ち立て」そして「茹でたて」なんだそうですが、確かに香りのよいお蕎麦は、この3つが揃ってできるものなんだろうという気がします。なかなか、この3つが揃っているところでおそばを食べることは難しいようです。こういうお店がいつまでも繁盛して、私達に美味しいおそばを提供してくれることを祈っています。

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