2018年3月24-25日と、甲斐大泉のペンション「悠々塾ファミリー」にて、ハーモニーを楽しむ合宿に行ってきました。メンバーは、男声4人、女声2人と淋しい人数でしたが、音響効果の素晴らしいホールのためもあり、澄んだハーモニーがホールに響き渡り、分離唱によって耳をひらいた素敵なハーモニーを存分に楽しむことが出来ました。

二日目に、聴きあうことを再確認する意味で、佐々木基之先生が分離唱の手ほどき的に作られた「ゆうやけこやけ」「時計の唄」を唄いました。わずか6人の響きですが、良く聴きあって作られたハーモニーは、残響がホールの天井まで抜けるように響き渡り、C-durのⅠ-ⅣーⅠといった簡単な和声終止形で出来た練習曲でも音楽の歓びを感じさせてくれました。この後、時間が許せるところまで、讃美歌を唄いましたが、昨日に唄ったものよりも、一段とまろやかさが増して素敵な音楽体験が出来ました。

女声メンバーの一人、YMさんは、東京藝術大学ピアノ専攻を卒業され、演奏会でのソロ、アンサンブルでの演奏をはじめ、後進へのピアノ指導と広く活躍されていられる方ですが、分離唱によるハーモニーを体験すべく分離唱の世界に踏み込まれ、分離唱が導く素晴らしい音楽によって、そのピアノ演奏にも格段の深みが増してきているようです。合唱練習の合間に、彼女が弾いてくれるショパンの「遺作」など聴かせてもらうと、本当に心が揺すられる思いです。

その彼女が初めてのリサイタルを、来る5月22日、東京小金井宮地楽器ホールで、続いて6月1日、神奈川横浜市緑区民文化センターみどりアートパークで開きます。彼女が初リサイタルのチラシに書いた言葉が、そんな彼女の音楽の本質を表しているように思えたので、ここに引用させてもらいます。

『ー前略ー ピアノを弾いていると作曲家が音に表現した喜びや悲しみが、まるで自分自身の心と一つになっているかのように感じる時があります。そういう瞬間が、何よりピアのを弾いていて良かった、と思える時です。-後略ー』

世の中には、まるで曲芸師のように凄いテクニックを、「これでもか!」と言わんばかりに見せつけていて、音楽の中身が感じられないピアニストもいます。それでも世の中の大衆の多くは、ただそのテクニックを賞賛する人が多く、CDは沢山売れ、チケット価格が高騰するという現象が起きているようです。ですが、YMさんのピアノは別格です。
演奏曲目を横書きで並べてみます。

東京音楽学校、現在の東京藝術大学音楽学部で、戦前戦後にわたって日本の音楽界を育てたピアニスト、レオニード・クロイツァーが遺した言葉が芸大構内に建てられた記念碑に刻まれています。クロイツァーを敬愛されていた佐々木基之先生が、私達に残してくれたものは分離唱を通して耳をひらいた美しいハーモニーですが、それは形だけではありません。勿論、美しいハーモニーを作るためには、形を学ぶことを抜きには到達することが難しいのですが、その音楽の響きの中に魂を感じることが欠かすことができない大切なものであることを、単なる知識ではなく、身体で覚えさせてくれたことだと思います。こうした、音楽に対する佐々木先生の想いがYMさんのピアノにも息づいているのを感じるのは私だけではないでしょう。

合宿場所として利用している「悠々塾ファミリー」は、音楽ホールもさることながら、料理も超一品で、毎回合宿参加を楽しみにしています。解散前にオーナーの方に感謝の気持ちを伝えると同時に、私たちの活動と同様にペンションの運営を末永く続けて欲しいという願いを伝えて来ました。石板に、「SINCE 1986」と刻まれています。もう32年目になるのですね。

 

 

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