以前、このブログで、甲府の美味しいそば屋「ふうりん」を紹介する記事を投稿しました。(2018年2月1日)
蕎麦を挽く様子が見ていて楽しい

実は、もう一か所、気にかけていながらいつも通り過ぎてしまっていた「そば処、桃園」に入ってみました。幹線道路の脇に目立たない看板を掲げていて、車のすれ違いのが難しい細い道を100mほど入ったところにありました。通り過ぎてしまう目立たない看板というのは、私が仕事で向かう目的地への道すがら、右折する細い路地の入口に小さく置かれており、仕事が終わって、丁度昼飯時にそのあたりを通過するときは、その看板は手前の建物の陰にかくれてしまうのです。ですから、残念な思いはあるものの、取り逃がした魚を「小さかったんだよ」と自分を慰めていましたが、この日は何故か、「ひょっとすると凄い穴場かもしれない」という気持ちがはやり、仕事帰りに一度は通り過ぎてしまった道を引き返し、たどり着いたのです。目立たない看板、そして、たんぼの畦道に毛が生えた程度の細い道から想像したのは、民家に少し手をかけた程度のつつましいそば屋でしたが、実際は結構な構えの建物でした。想像と違った店構えと同時に、もう一つ驚かされたことがありました。最近宅配業界においては無駄なエネルギーを抑えようと、不在再配達を減らす目的で動き出した「宅配ボックス」が、なんと店の前に設置されていたのです。私は「宅配ボックス」というものについて、「歓迎すべきもの」という良い印象を持ってはいたものの、実際のものをまだ見たことがありません。自宅のある神奈川周辺でまだ見たことのない「宅配ボックス」を、山梨の、それも市街地から遠く離れた、畑の多い場所で発見したのは驚きでした。

店に入ると、素朴な顔つきをしたやや年配のおばさんが「いらっしゃいませ」と元気な声をかけてくれました。広々とした店内の造りは、飾り気もなく純朴な田舎の落ち着いた雰囲気で、心身ともにくつろぎを与えてくれます。

店に入ったのが、12時になる少し前のせいか、いくつかあるテーブルにはまだ客がついておらずよりどりみどりです。さて、注文はどうすればいいのかなと店内を見回したところまたまた驚きの発見です。「カウンターにあるパソコンで注文すると、10%サービスします。」の貼り紙です。人手不足、人件費削減対策で食券自動販売機が置かれている店を見かけることが多くなりましたが、「パソコンで注文」は初めてです。一目瞭然で、手作りだということがよくわかります。配電盤用の筐体に、穴を開け、必要な機能を持った部品が取り付けられています。見てくれは決して良くないものの、DIYでモノづくりの大好きな私などが見ると「すごいなあ。ここまでやるんだ」と、感心してしまい、微笑ましくもなります。千円札を投入し、隣の大型画面で希望のメニュー(710円)を選択すると、お釣り290円がすかさずジャラジャラと出てきます。連動してパネルに取り付けられた小型プリンタから幅57mmの紙に、画面で指定したテーブル№と、メニューが印刷されて出てきます。時刻が合っていないのは愛嬌と思えばいいのでしょうね。注文した情報は同時に厨房へ伝えられています。「もりそば大盛り 710円」を注文しました。テーブルの上に置かれたメニューを開けてみると、「もりそば大盛り 880円」と書かれています。10%どころか20%のサービスですね。「大盛り」は二玉分と書かれていました。閉店前のサービスなのかどうかは聞きそびれましたが、野菜の天ぷらと、青菜の胡麻和えがついていました。

店内の片隅には、かつて使われていたという、石臼が置かれていました。使われないまま、だいぶ長い時間が経過したらしく、埃が積もっていました。ソバの実を供給するホッパーも、手作りらしいものが取り付けられていました。

驚きの連続でしたが、その極め付きが次の貼り紙でした。「4月20日を持って、閉店いたします。」明日がその4月20日です。虫の知らせとでもいうのでしょうか。これまで大して気にも留めずに通り過ごしていた「そば処 桃園」に、何故だか今日は何としても入ろうという気持ちが高まり、意を決して細い道を潜り抜け初めて入った店。これが最初で最後になるなんて。不思議な縁を感じながら、店を後にしました。

 

 

 

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