この動画は、ダニエル・バレンボイム指揮ベルリン・フィルハーモニーの演奏です。(2001年) クラリネットのソロは、現在、指揮者として活躍するカールハインツ・シュテフェンスです。管楽器奏者の枠には収まりきらない、高い音楽性が感じられる演奏だと思います。続いて、オーボエが新たな旋律を奏でます。その後に、弦楽器群の奏でる、やるせなく美しい旋律が、やや重い気分をもたらします。かと思うと、その雰囲気を取り払うように、元気づけてくれるような、軽やかな響きを奏でてくれます。

動画に見るバレンボイムの指揮ぶりも見事で、タクトを振ってする指示も鮮やかですが、それはほんの一部で、タクトを持ち替えて腕・手首・指先の動きを駆使して、彼の表現しようとしている音楽を見事に楽団員に伝えています。勿論、演奏本番の指揮ぶりだけで、このような素晴らしい音楽が引き出せるわけはなく、彼が意図する音楽を楽団員と共有できるまで、妥協することなくリハーサルを完遂させた証が、この動画に表れているのだと思います。

チャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」は、日本の義務教育の音楽教科書にも取り上げられているので、知らない人はない位にポピュラーな音楽となっています。最近のマスコミを賑わせている政治家同士のつばぜり合いから生まれている、よろしくない国民感情を念頭に置いてみると、あの国から表題の音楽のような実に甘美な音楽が生れる不思議さを感じずにいられなくなります。バレエ音楽「くるみ割り人形」という、芸術作品が生まれた時代背景をもう少し深く知りたいと思い、調べてみることにしました。

バレエ音楽「くるみ割り人形」は、ドイツ後期ロマン派の小説家・音楽家、ホフマンが19世紀初頭に書いた童話「くるみ割り人形とネズミの王様」を、フランスのデュマ親子が翻訳したものをもとにして、バレエ音楽用としてわかりやすくするため、あらすじを省略して作られました。

人形使いのドロッセルマイヤーおじさんからクリスマスプレゼントに、不格好な「くるみ割り人形」をもらった少女クララは、なぜかその人形に心惹かれます。兄のフリッツと取り合いをして、壊れてしまった人形を、クララは自分のドレスの白いリボンを人形に巻き夜遅くまで看病します。夜中の12時の鐘の音と共に、クララのからだは人形と同じ大きさまで小さくなりました。そこへ、どこからともなく現れたネズミの王様率いる軍隊と、おもちゃの兵隊との戦争が始まります。おもちゃの兵隊のリーダーは、クララが看病していたくるみ割り人形です。劣勢だったおもちゃの兵隊を助けるクララ、そのせいあっておもちゃの兵隊が勝利します。すると突然、くるみ割り人形は、凛々しい王子様に変身し、クララをお菓子の国へと案内します。各国のお菓子の踊りが披露されます。その一つが、今回紹介する「花のワルツ」です。甘く夢のような世界で過ごすクララ、時間はあっという間に過ぎてしまい、ふと目を覚ますと自宅のクリスマスツリーの下で寝ていました。

世界には、さまざまな国と文化があり、政治・経済のしくみもお互い相いれないところがありますが、人の心は共通するところが限りなくあります。親が子をいつくしむ心は万国共通だと思います。子供に大きな夢を与え、その夢を大きく広げていくことは、おとなの役割です。ごく限られた一部の大人が、子供の夢を壊し、最悪はその命まで奪うという無残なニュースが紙面をにぎわしています。報道の自由ということも確かにあるのかも知れませんが、無残なニュースが繰り返されていると、いつしか、それが当たり前のように錯覚してしまう人も出てきかねないと思います。真実を伝えるという、報道に携わる人たちの言い分も間違ってはいないと思いますが、伝える自由があると主張するならば、伝えない自由というのもあって当然でしょう。人間の本来持つ、愛を壊すふるまいについては、状況を良く判断して制限を加えることもあってしかるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

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