ピアニスト小山実稚恵さんと、ソプラノ歌手ヘイリー・ウエステンラ。お二人のめざましいご活躍によって私たちにもたらされる音楽の感動と喜びをひとしお感じているこの頃です。

お二人の素晴らしいご活躍の背景について、氷山の一角に過ぎないと思いますが、私の手が届く範囲で調べてみると、お二人の生い立ちには、素晴らしい指導者に巡り合えたという共通点があり、それが現在のお二人の活躍の支えになっているのではないかと思い至りました。

小山さんは、宮城県仙台市で生まれ、4歳になる前に、岩手県盛岡市へ引っ越されました。隣り合った2つの白い鍵盤にまたがって、黒鍵が印刷されているという(年配の方ならご存知の方が多いと思います)おもちゃのピアノが大好きで、時間を忘れて鍵盤をたたいて聞き覚えの童謡の旋律をなぞり、音が交じり合い、響きが重なるのを楽しんでいたといいます。6歳の誕生日にアップライトのピアノを買ってもらい、はじめは近所の先生に見てもらったのですが、母親がある音楽教室の発表会を見に行き、そこの生徒さんが楽しそうに、全然違う感じで弾いていたのを見て、「ここがいいわ」と、感じとり、その教室に移り、吉田見知子先生から指導を受けるようになりました。小山さん曰く、吉田先生は厳しい指導ではなく、ピアノを教えるのも素晴らしかったけれど、単なるピアノ指導者ではなく、教育者としての印象が小山さんには残っているようです。音楽することの大切さとか、生き方とか、ピアノが上手になることだけではないことを、”ピアノは競争じゃない。自分より上手な人に喜んで祝福の拍手を贈れるような心の広い人間になって欲しい”と教えられていたそうです。中学2年のとき、父親の仕事の関係で東京に引っ越され、中学3年を東京の中学校で過ごすことになったのですが、東京では、吉田先生のような素晴らしい先生に巡り合えず、吉田先生の指導を受けるために、盛岡まで通ったそうです。東京芸大付属高校に進学してから、芸大の大学院へと進む中で、田村宏先生の厳しい指導を受けるようになったそうです。小山さんにとって、先生は吉田先生と、田村先生の二人だけだと言います。現在、ピアニストとして活躍されている人には、海外へ留学してに国際的に名の知られた先生に就く人が多い中で、小山さんは純国産ですが、これまで日本人ピアニストとして例のない、チャイコフスキー国際コンクール、ショパン国際ピアノコンクールという世界二大コンクールに入賞するという偉業を成し遂げています。小山さんの音楽は、卓越したテクニックを駆使し、作曲家が表現しようとした心の動きをまっすぐに私たち聴く人々に訴えかけてくれます。

ヘイリー・ウエステンラは、ニュージーランドのクライストチャーチ生まれ。私が、彼女の歌声と姿に出会ったきっかけは、分離唱を通したハーモニーを楽しんでいる集いの中で、良く歌うことがある「日くれて四方は暗く」(讃美歌第39番)の曲です。この曲を気に入られていてよくリクエストを出すメンバーから、この曲はイギリスなどキリスト教文化の社会で、サッカーやラグビーの大会開会式の中で歌われている「Abide With Me(主よ、ともに宿りませ)」だよと教えてもらいました。

早速、帰宅してインターネットで「Abide With Me」を検索したところ、競技場の中央に設えられた壇上で「Abide With Me」を歌い上げるヘイリー・ウエステンラの声と、姿を発見したのです。その姿は、たとえ公式行事とはいえ、真剣なまなざし、態度が尋常のものではなかったのです。大げさかもしれませんが神々しさのようなものを感じさせられました。ネットで検索してみたところ、今まで知らなかった自分が恥ずかしくなるほど沢山の動画がヒットしたのです。ここではとても紹介しきれないので、どうぞ皆さん「ヘイリー・ウエステンラ」で検索して、ゆっくりご覧になってください。

祖母は歌手、祖父はピアニストという音楽好きの一家に育ち、音楽教育に熱心なフェンダルトン小学校に入学。

担任教師が指導するオーケストラに入るほか、複数の聖歌隊に参加するなど、恵まれた音楽環境の中で、彼女自身積極的に音楽の世界に飛び込み、いろいろなことを吸収したことがうかがえます。

担任教師の話:子供の音楽的才能に親が気付かないこともあります。私はジルにこういいました。ヘイリーは素晴らしい歌手ですよと。彼女は他の子供たちとは違いました。素晴らしい歌の才能の持ち主で、それを伸ばすべきでした。

 

 

 

 

彼女の才能に気づいた教師の勧めで、ヴァイオリン、ピアノ、リコーダーを習います。発声の練習も始め、ニュージーランド随一の声楽教師である、Malvina Major(マルヴィナ・メイジャー)も彼女の才能を賞賛し、レッスンを買って出たそうです。

メイジャー先生の言葉:私の信条は自分らしくいること。ありのままの自分でいいの、無理しちゃダメ。普段話すときのようにただ声を出すだけではダメなの。全身を使って足を踏みしめて歌わなければいけないわ。声の魅力を余すところなく伝えるには気持ちを込めて歌うことよ。観客はお金を払ってあなたを見に来たの、あなたが発する言葉のすべてを待ち望んでいるわ。やるしかないの。

彼女の質問には母親の気持ちで答えるの。私も同じ舞台の経験をしているし、多くの苦い経験もしたわ。問題が起こると彼女は私の元へ来るわ。ご両親が答えに困る問題もあるものね。答えたくても彼らには舞台経験がないの。

ヘイリーには、ハイレベルの音楽専門学校で学んだというキャリアは私が検索した限りにおいては見当たりません。有名音大に進む実力はきっと持っているはずだと思いますが、彼女があまりにも早く舞台に立つ仕事に忙しくなった結果として、学校にも行く時間が取れないということになったようです。ただ、有名大学へ行くことが幸せかというとそうではないということを彼女は身をもって示してくれていると思います。小学校の担任教師、そして声楽教師、この二人から強い影響をうけ、持ち前の才能、そして何よりも意欲が現在の彼女を生み出したのではないかと思います。

 

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