母校、栃木県立宇都宮高等学校の校歌作曲者信時潔の作品の魅力に惹かれて、その後山梨大学合唱団にて、彼のその他の作品(合唱曲)に触れた想いを綴ってみます。

いろはうた 越天楽の旋律に拠りて ニ長調 4/4拍子 Adagio テンポ66
深山には  神楽歌庭燎  イ短調 4/4拍子 Larghetto テンポ72
あかがり  神楽歌早歌  イ短調 4/4拍子 Allegretto テンポ126
春の弥生  慈鎮和尚  ト長調 4/4拍子 Andante テンポ92
大島節   伊豆大島民謡 ロ短調 2/4拍子 Langsam テンポおそく

<いろはうた>
色は匂へど散りぬるを  いろはにほへどちりぬるを
我が世誰れぞ常ならむ  わがよたれぞつねならむ
有為の奥山今日越えて  ういのおくやまけふこえて
浅き夢みじ酔ひもせず  あさきゆめみじえひもせず

越天楽の旋律をベースに、6篇の変奏曲風に作られています。詩は空海(弘法大師)作と伝えられています。単純素朴で質実な作風で、その中に穏健で荘重な響きが展開されていきます。
静寂な空間を破るように、突如A音ユニゾンでの歌いだしが二拍続いてから、三拍目のGHDの和音(サブドミナント)に広がり、第二小節DFisAへ移る四拍目でソプラノとバスが4部音符で一拍延ばしている中をアルトとテナーは八分音符で動きを聴かせるという、この第1小節を聴いただけでゾクゾクとしてきませんか。素朴ではありますが、第1小節に限らず実に巧妙な音の動きが随所に散りばめられているのに感心させられます。合唱の醍醐味をたっぷりと味わわせてくれますね。
第1変奏曲は、6/4拍子で、ゆったりと天女が舞う姿を思わせるような音楽です。テナーがユニゾンで4小節歌い、5小節目でアルトが加わり、9小節目でバス、そして13小節目でソプラノが加わるカノン風な曲の作りです。
第2変奏曲は、5度上のイ長調に転調し、ゴシック建築を思わせるような荘厳な響きと、メリハリのある音の動きで魅了させてくれます。厳粛な旋律のままで終わると思いきや、最終小節でソプラノとバスが主音を継続している中、アルトとテナーが逸音の動きを聴かせてくれるところがニクイですね。ここが、第3変奏曲への滑らかなつながりを果たしているような気がします。
第3変奏曲 コーダを除き、女声四部で、裏拍に三連符を散りばめた箏曲を思わせるような旋律の動きです。
第4変奏曲 バスがゆったりと主題の旋律を歌うところに、上の三パートがカノン風にオブリガートを重ねていく、緩急の動きが織り成す美しい綾を見る思いがします。
最終曲 4パートの旋律は、主題に戻りますが、第1節と第2節の前にバスが朗読調でそれぞれの歌詞を歌い上げます。

曲の構成といい、各パートの音の動きの重なりの妙に惚れ込んで歌いました。今思うのですが、分離唱でひらかれた耳で、この曲を歌ったら、すごいことになるのでは、と念願して止みません。

Follow me!