2016年3月27日の放送は、世界的に名の通った著名な音楽コンクールにおいて輝かしい成績を収め、現在国内外で活躍している若手音楽家4人の演奏を紹介してくれました。
最初はピアニストの反田恭平さん F.リスト タランテラ 巡礼の年 第2年補遺「ヴェネツィアとナポリ」20160327Aピアニスト反田恭平さんを知らなかったのですが、たまたま昨夜9:30に放送されたNHK「らららクラシック」で取り上げられていたショパンの「雨だれ」を弾いていたのが反町恭平さんだったので偶然にも二日続けて彼の演奏に触れることになりました。ここに載せた写真は、長髪をきれいに流した女子と見間違えるような風貌ですが、昨夜の放送と同じく、髪を後ろにまとめて止めたスタイルで、汗びっしょりでの熱演でした。
ショパンの音楽の世界を精魂込めて表現しようとしている姿に感心はするのですが、ショパンの心は伝わってきませんでした。演奏者独自の音楽観で、ショパンの音楽を造り上げてしまっているような印象を受けました。こういう演奏が、国際コンクールでは高い評価を獲得するという現状に少し寂しい感じがします。

続いて同じくピアニストの辻井伸行さん ベートーヴェンのピアノソナタ第8番 悲愴 第2楽章20160327B先ほど演奏した反田さんより年齢は上だと思いますが、同じ若手演奏家の中に入るのですが、悲愴の第2楽章を弾き始めた彼の左手が紡ぎ出す低音部の音の動きに、人間の魂の深さ、重さをしみじみと感じられる演奏だと思いました。盲目という他に変えることのできない大きなハンディキャップを背負って音楽に取り組む辻井さんならではの演奏ではないかと思います。

続いて、ヴァイオリニストの成田達輝さん W.クロールの「バンジョーとフィドル」20160327C私はこの作曲家も作品も知らなかったのですが、成田さんの見事な演奏には、何か惹きつけられるものを感じました。

最後に、クラリネット奏者の吉田誠さん G.コネッソン 「ディスコ=トッカータ」20160327D番組の中で紹介されましたが、クラリネットの新しい世界に挑戦しているという吉田さんの演奏するフレーズの一つ一つに新鮮なものを感じることができました。クラリネットの響きと言えば、連想されるのがガーシュインの音楽の中に現れる、何かしら気怠いイメージが一つ、そしてモーツァルトのクラリネット協奏曲の、軽やかな音の動きの中にも、どことなく「さよなら」を告げるような一抹の寂しさを感じてきたのですが、今日はまた新しい響きを聴くことができました。

今日の番組は、これまでの放送と比べるとちょっとおとなしい、言い換えると演奏家の自己主張が私の心に飛び込んでくるのが少なかったように感じました。私の欲目かもしれませんが、若手4人の演奏家たちですが、辻井さんだけはちょっと別格のような気がします。

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