2016年5月29日の放送は、「久石譲が語る歴史を彩る6人の作曲家たち」の前編です。

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タイトルをその通りに解釈すると、「まず最初はこの人です」という風な番組の展開かと思いきや、さにあらず。音楽の歴史をその発生からおさらいするような音楽の授業を思わせるようなものでした。「倍音の発見」から「音階」が生まれたという「久石先生」の説もまた興味あるものです。

私達の多くが親しんでいる音楽は、西洋の音楽を明治時代に取り込まれて日本の文化に定着してきたものが主体となっているようです。その西洋音楽の源は教会音楽という認識が一般的だと思います。日本建築とは比べ物にならないほどの残響効果の大きい西洋の教会建築の中だからこそ、発声された響きのなかから互いに響きあう複数の高さの音を選りすぐりながらいろいろな旋法が編み出されてきたようです。歴史をさかのぼると、単旋法すなわち一本の旋律で唱えられるお経のようなものに、和音が加えられたモノフォニーから、ポリフォニーへと進化していきます。和音も初めは周波数比が2:3の完全五度の響きから始まり、同じく4:5:6の長三和音、短三和音を簡単な周波数比で現わそうとすると10:12:15になります。平均律音階によると、長三和音と短三和音を簡単に比べることができるのですが、純正律で周波数比を比べてみると長三和音が簡単な素数の比で表せるのに対して、短三和音はそうはなりません。理屈はさておいて、両者を聴き比べると、一方は陽気で明るい響きですが、もう一方は暗く、物悲しい響きではっきりとした感情の違いがあります。周波数の比が簡単な整数で表せるのと、そうでないのとで心に訴えるものが違うというのはちょっと面白いですね。

番組では、細かい説明は飛ばして、まずグレゴリオ聖歌の「アヴェ・マリス・ステラ」をカウンターテナーで紹介してくれました。作曲家として、ジョスカン・デ・プレとモンテヴェルディの二人が挙げられました。20160529C

長三和音、短三和音といった基本的な和音だけでは飽き足らず、様々な感情、心理の表現のために様々な和音が作られていく様子を説明し、次に紹介したのがL.v.ベートーヴェンの交響曲第5番の第1楽章と第4楽章それぞれのさわりの部分です。

最後に、R.ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」の一部分が紹介されます。べートーヴェンもそうですがここまでくるとグレゴリオ聖歌の響きとは大きく様変わりして、オーケストラの編成も小さいものから、大きなものへと進化してきます。それと同時に、その音楽が表現しようとしているものが複雑になり、わかりにくい方向へと進んでいることもあるようですね。

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次回がどんな展開を見せてくれるのか楽しみです。

2016年6月6日 文章を一部更新しました。

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